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戦略が「戦術」や「計画」に落ちる理由

会議で「戦略が大事だ」と言った瞬間、話がややこしくなる。
そして、こう言われて終わることがあります。

  • 「それは戦術の話だよね」
  • 「計画にしよう」

戦略という言葉が弱いのではありません。
戦略を“次元なし”で使うと、こうなりやすいだけです。

※ここで言う「次元」は、数学の次元ではなく、会議で同じ言葉を同じ物差しで扱うための評価軸(区別の軸)のことです。

目次

この記事で得られること

  • なぜ戦略が『戦術』『計画』に寄りやすいのかが分かる
  • それが能力やセンスではなく、言葉の運用(次元の不在)で起きると理解できる
  • 会議で戦略を“決める言葉”に戻す、最短の一言が手に入る

先に整理(要点)

戦略が戦術や計画に落ちる理由は、ほぼ一つに集約できます。

次元(物差し)を決めないまま「戦略」という概念だけで話しているから。

次元がないと、人は(無意識に)“対”を欲しがります。
そのとき出てくる対が、いわゆる 「反対語の既製品」です。

  • 戦略 ↔ 戦術
  • 戦略 ↔ 計画

ただし、ここでのポイントは「既製品が悪い」ではありません。
次元が決まっていないと、既製品の対に吸い込まれやすい——それが問題です。

「戦略」は多義語である

戦略という言葉は便利です。便利すぎて、いろいろな意味を背負います。

  • 方向性
  • 勝ち方
  • 重点
  • 施策
  • 段取り
  • スケジュール

この状態で会議をすると、同じ「戦略」でも、人が見ているものが違う。
違うまま話すと噛み合いません。

でも、会議は終わらせたい。結論は出したい。
だから人は、分かりやすいところに話を寄せます。

(学術側でも「戦略は一つの定義に収まらない」と整理されます。たとえば“plan / ploy / pattern / position / perspective”のように、同じ語が複数の見え方を持つ前提で議論されます。)

戦略↔戦術が強いのは、「上位/下位」の次元が分かりやすいから

戦略と戦術をペアにするとき、多くの人が置いている次元は単純です。

  • 戦略:上位(何を・どこで勝つか)
  • 戦術:下位(どうやって実行するか)

この次元は、会議を前に進めます。だから強い。

ただし副作用もあります。
「戦略」と言ったつもりでも、話が“やり方(手段)”に吸い寄せられて、いつの間にか戦術の話になっていく。

これ自体は自然な現象です。現場は実行したいから。
ただ、上位(勝つ算段)を決める前に、下位(やり方)が増えると、勝つ算段が“やり方”に回収されます。

戦略↔計画が強いのは、「仮説/確定」の次元が分かりやすいから

戦略と計画をペアにするときは、次元がこうなります。

  • 戦略:未来仮説(外れる前提)
  • 計画:確定工程(守る前提)

現場は、守れるものにしたい。
外れる前提の議論は疲れる。
だから戦略は、つい「じゃあ計画にしよう」に引っ張られます。

ここで押さえたいのは、「計画が悪い」ではなく、仮説(外れる前提)を抱え続けるのは人にとってコストが高いということです。
だから、次元が曖昧な会議ほど、確定できる工程へ寄っていきます。

でも、本当は戦略の対概念は別にある

戦略の対を「戦術」「計画」にすると、場は荒れにくくなります。
でもそれは、戦略を“安全な言葉”にしてしまう。

戦略が本当にぶつかる相手は、たとえばこちら側です。

  • 何でもやる(捨てない)
  • 無難(差がない)
  • スローガン(検証できない)
  • 全部改善(焦点がない)

ここは耳が痛い。だから人は無意識に、戦略の対を“戦術/計画”に寄せてしまう。
そのほうが揉めにくいからです。

でも、そのぶん「勝つ算段」は弱くなりがちです。
(学術側でも「戦略=目標の羅列」「良さそうな言葉で包む」などは“戦略っぽいが戦略ではない”として区別されます。)

対策は一つ。「次元を先に決める」

戦略が戦術や計画に落ちるのを止める方法はシンプルです。

戦略と言ったら、次元を言う。

たとえばこう。

  • 「今日は“差の種類(程度/種類)”の次元で戦略を決めます」
  • 「今日は“検証(確認できる/未確認)”の次元で戦略を定義します」
  • 「今日は“捨てる(やらない)”の次元で戦略を固めます」

ここで大事なのは、「対概念は反対語を探すこと」ではない、という点です。
同じ物差しの反対側(同一軸の両端)として出てくる状態が正解です。

次元が決まれば、対は自然に出ます。
その瞬間、戦略は“決める言葉”に戻ります。自然に出ます。
その瞬間、戦略は“決める言葉”に戻ります。

結び

戦略が戦術や計画に落ちるのは、知識不足でも、能力不足でもありません。
次元がないまま概念で話しているだけです。

会議の冒頭で、これだけ言ってください。

「戦略の話をしているけど、今日はどの次元で決める?」

おすすめ書籍

ビジネス系 4冊

  1. 『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト)
    「戦略っぽい言葉」をやめて、本当に決めるべき“焦点”に落とす本。この記事で言う「戦略がスローガンに寄る」現象を、理論と事例で止めてくれます。
  2. 『ストーリーとしての競争戦略』(楠木 建)
    戦略を「正しさ」ではなく“勝つ算段”として捉え直すのに効きます。戦略が“計画”や“施策”に回収される前に、選択と一貫性へ戻す視点が手に入ります。
  3. 『Playing to Win(邦訳:戦略は「何をしないか」から始まる 等)』(A.G.ラフリー/ロジャー・L・マーティン)
    「どこで勝つか」「どう勝つか」を質問の形で固定し、戦略を“決める”方向へ運びます。会議で戦略が戦術に落ちるのを防ぐ、実務に強い型。
  4. 『競争戦略論』(マイケル・E・ポーター)
    戦略を「改善(ベター)」と混ぜないための定番。活動の整合(fit)やトレードオフの話は、「次元を先に決める」感覚と相性が良いです。

非ビジネス系 4冊

  1. 『パーソナル・コンストラクトの心理学』(ジョージ・A・ケリー)
    人は世界を“そのまま”見ず、自分の区別(両極のものさし)で予測して動く、という理論。この記事の「次元が決まらないと対概念が既製品に吸い込まれる」を、心理学側から補強できます。
  2. 『ファスト&スロー』(ダニエル・カーネマン)
    「外れる前提の仮説(戦略)」が、なぜ「守れる工程(計画)」に寄せられやすいのか。人間の判断のクセ(確実性への偏り)として読むと、会議設計の納得度が上がります。
  3. 『哲学探究』(ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン)
    言葉の意味は“辞書”ではなく使い方の中にある、という発想の古典。「戦略」という言葉が多義語として暴れる理由、そして“次元を先に決める”価値が腑に落ちます。
  4. 『科学革命の構造』(トーマス・S・クーン)
    同じ事実でも、枠組み(パラダイム)が違うと見え方が変わる。会議で起きる「同じ単語なのに話が噛み合わない」を、枠組みの衝突として理解する助けになります。

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