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発想の転換は「答え」ではなく「問い」で起きる

経営会議で、こういう雰囲気になることがあります。
計画はある。施策もある。会議も回っている。
それでも、会社の手触りが変わらない(会社が前に進んでる感じがしない)。

このとき多くの組織は、「もっと良い答え」を探しにいきます。
でも実際は、答えが足りないのではなく、問いが古いことが原因になっているケースが多い。

発想の転換は、ひらめきではありません。
前提(当たり前)を入れ替えて、問いを更新することです。

目次

この記事で得られること

「答え探し」と「問いの更新」を混同しないための見分け方が分かります。

会議を“それっぽい結論”から、意思決定(捨てる/集中する)に戻す型が手に入ります。

30分で「問い → 最初の一手」まで落とす実務手順にできます。

先に整理:
答えは「候補」を増やす。問いは「やること」を変える。

観点答え(解決策・施策)問い(前提・焦点)
何を言っている?何をやるか(手段)何を解くか(目的・前提)
価値(経営で何に効く?)進め方が速くなる進む方向が変わる(引き算が起きる)
典型的な誤り答えを増やして忙しくなる問いを固定して手段論に閉じる
会議での問い(見分け)「それは何を改善する施策?」「それは何のため?前提は何?」
実務の使い方(手順)候補を比較して選ぶ前提を置き換えて、候補そのものを変える

以降は、この表の「使い方」を会議の型として落としていきます。

「答え」と「問い」は、似て非なるもの

要点: 答えは“手段”、問いは“ハンドル”。経営はハンドルが古いと進みません。

発想の転換は、「アイデアを増やすこと」ではありません。
前提を入れ替えることです。

  • 施策を増やす(答え探し):やることが増える(忙しくなる)
  • 前提を変える(問いの更新):やることが変わる(減ることもある)

経営に効く転換は、たいてい「足し算」ではなく引き算を伴います。
何をやめるか。どの土俵を降りるか。何に集中するか。

それを決める力が、問いです。

経営が止まるのは、たいてい「答え」を増やしたとき

要点: 答えが増えるほど、会議は“手段の渋滞”になります。

組織は「答え」よりも「問い」に引っ張られます。
どんな会議にも、暗黙の問いが固定されています。

  • 「売上をどう増やすか」
  • 「人手不足をどう埋めるか」
  • 「値上げをどう通すか」

どれも正しい問いです。
ただ、状況が変わると、その問いが会社を縛ることがあります。

問いが古いまま答えを増やすと、会議は「正しい施策の品評会」になります。
現場は忙しくなるのに、会社は変わった実感がない。
これが、“止まっている”状態です。

では、答えは不要か?——むしろ逆だ

要点:答えは必要。ただし先に“問いの更新”で方向を合わせる。

答えが不要なのではありません。
答えは、問いが更新されたあとに選ぶから効きます。

問いが定まると、議論は「何をやるか」から、
「何をやめるか/何に集中するか」へ移ります。


問いは「一点突破」で更新する

要点:問いを全体でいじると迷子になる。会議で効く“型”を1つだけ使う。

ここからは、会議にそのまま持ち込める“型”です。
(迷ったら、今いちばん詰まっている論点に対して、1つだけ選ぶ)

発想の転換を起こす「問いの型」5つ

1)目的を戻す問い(Why)

要点: 手段の話に寄った会議を、「目的」に戻す。

  • そもそも、何のためにそれをやる?
  • それが達成できたら、誰がどんな状態になる?

「売上を増やす」ではなく、「顧客の困りごとを減らす」に戻す。
目的に戻ると、手段の呪縛が外れます。


2)前提を疑う問い(Assumption)

要点: “当たり前”が固定されると、同じ資源で同じ戦い方しか見えなくなる。

  • それは本当に前提?ただの慣習じゃない?
  • 逆でも成立するとしたら、何が変わる?

例:「来店が前提」→「来店しない体験を設計する」
前提が外れた瞬間、同じ資源で別の勝ち方が見えます。


3)制約を変える問い(Constraint)

要点: 制約は敵ではなく“設計条件”。できない理由を、設計のレールに変える。

  • 予算が半分なら?ゼロなら?
  • 人が増えないなら?むしろ減るなら?
  • 納期が明日なら?

制約は、発想の方向を決めるレールです。
「できない理由」を「設計条件」に変えます。


4)反転させる問い(Invert)

要点: 失敗の設計図を先に作ると、守るべき要点が浮かぶ。

  • それを“うまくいかせない”なら、何をする?
  • 顧客が離れる条件を先に書くと、何が見える?

事故の設計図を作ると、守るべき要点が見えます。
リスク対策が具体化します。


5)単位を変える問い(Scale)

要点: 解けないときは、単位(時間/対象/範囲)がズレていることが多い。

  • 1日単位で見ると?10年単位だと?
  • 1人の顧客で見ると?地域全体で見ると?

単位を変えると、打ち手の粒度が決まります。

置き換えるだけで、会議が動く(問いの例)

問いが変わると、まず 「やらないこと」 が決まり始めます。

  • 「人が足りない」
     → 「人が増えない前提で、価値を落とさないには?」
  • 「値上げが怖い」
     → 「値上げそのものより先に、“価格の理由”を何にする?」
  • 「新規を増やす」
     → 「新規の前に、離脱を半分にするなら、何をやめる?」
  • 「競合に勝つ」
     → 「競合と同じ土俵に立たないために、何を捨てる?」

問いが変わると、議論の筋肉が変わります。
“やるべきこと”を増やす会議から、“やらないこと”を決める会議に変わります。

問いを動かす、経営者のチェック

要点:問いを1枚挟むだけで、会議が“結論”から“検証と資源配分”に戻る。

  • いま議論しているのは「答え」か「問い」か?
  • その問いは、誰の価値に接続しているか?(顧客/社員/地域)
  • その問いは、捨てるものを含むか?(捨てない問いは意思決定にならない)
  • その問いが正しいなら、何が動けば成功と言えるか?(指標)
  • 次の1週間で、小さく確かめられるか?

問いの質を上げるチェックリスト

この5つで、自社の問いを点検できます。

  • その問いは、行動を変えるか?(結局いつもと同じになる問いは弱い)
  • その問いは、誰の価値に接続しているか?(顧客/社員/地域)
  • その問いは、捨てるものを含むか?(捨てない問いは意思決定にならない)
  • その問いは、検証可能か?(次の1週間で確かめられるか)
  • その問いが正しいなら、何が動けば成功と言えるか?(指標があるか)

30分でできる:発想の転換ミーティング(実装版)

要点:問いを更新してから、最初の一手を“実験”に落とす。

Step1(5分)いまの問いを書く
例:「売上を増やすには?」

Step2(10分)前提を3つ書く
例:「来店が必要」「単価は上げづらい」「人手は増えない」

Step3(10分)前提を1つだけ反転して問いを作り直す

  • 来店しない前提なら?
  • 単価を上げる前提なら?
  • 人が減る前提なら?

Step4(5分)“最初の一手”だけ決める
大きな計画ではなく、1週間で検証できる小さな実験に落とす。
(例:新しい説明文での見積り提示を3件だけ試す、など)

結論:問いで方向を定め、実験で再現性を取る

経営の基本は、次の順序です。

  1. いまの問いを言語化する
  2. 前提を1つ置き換え、問いを更新する
  3. 最初の一手を小さな実験に落とす
  4. 当たりを固定し、再現性として積み上げる

問いは、会社のハンドルです。
ハンドルが更新されると、同じ資源でも前に進みます。

おすすめ書籍(問いを更新し、発想の転換を“実装”するために)

発想の転換は、アイデアの量ではなく問いの更新で起きます。そのためには、①行動様式(運用)を回す本、②概念(レンズ)を交換する本、③歴史(失敗の再現防止)から学ぶ本――この3束で読むのが効果的です。


1)実装(運用)|問いを「次の一手」に落とす 〔2〜3冊〕

会議を「結論」ではなく「学習」が残る場に変えるための本です。問いを立て直し、仮説を置き、検証する。運用の型が手に入ります。

  • 『イシューからはじめよ』(安宅和人)
    「何を解くべきか」を誤らない。努力を成果につなげる“問いの設定”の基本書。
  • 『リーン・スタートアップ』(エリック・リース)
    正解探しから脱し、小さく試して学習を積み上げる。問いを“実験”に変える方法。
  • 『シンキング・ファスト&スロー』(ダニエル・カーネマン)
    即断の強みと危うさを理解し、意思決定を「勘」から「仕組み」へ移す背景知識。

2)レンズ交換(概念)|前提を疑い、問いを更新する 〔3冊〕

発想の転換は「疑い方」を身につけたときに起きます。ここは、短期の打ち手ではなく、思考の土台(前提)を交換するための本です。

  • 『ソクラテスの弁明』(プラトン)
    問いは相手を論破する道具ではなく、自分の前提を照らすための道具である。
  • 『方法序説』(ルネ・デカルト)
    「当たり前を疑う」を精神論にしない。疑い方を手順として持つための古典。
  • 『科学革命の構造』(トーマス・クーン)
    問題の定義そのものが変わると、答えの世界も変わる。パラダイム転換の理解に最適。

3)再現防止(歴史)|問いの誤りが組織を壊す 〔1〜2冊〕

問いが固定されると、組織は合理的に“誤る”。歴史から学ぶことで、「問いを更新する必然性」が増します。

  • 『失敗の本質』(戸部良一 ほか)
    能力不足ではなく、前提固定と目的手段のズレが失敗を生む。意思決定の病理を学べる一冊。
  • 『論語と算盤』(渋沢栄一)
    理念(善悪)と数字(成果)を同時に扱う緊張感が、問いの質を上げる。経営の言葉が薄くならない。


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